
「ネットオークションで副業を始めたい」「リサイクルショップを開業したい」と考えたとき、最初に直面する壁が「古物商許可(こぶつしょうきょか)」です。
「新品を仕入れて売るなら不要?」「不用品を売るだけでも許可がいるの?」といった疑問を持つ方は少なくありません。無許可で営業を行うと「無許可営業」として処罰の対象になる可能性があるため、正しい知識が不可欠です。
この記事では、行政書士が古物営業法に基づく「古物営業」の定義、3つの種類、そして許可が必要なケースと不要なケースについて、法的根拠に基づきわかりやすく解説します。
「古物営業」とは?法律上の3つの種類と手続き
古物営業法において「古物営業」とは、以下の3つの形態のいずれかを営むことを指します(古物営業法第2条)。ご自身のビジネスがどれに当てはまるかを確認しましょう。
一般的な転売ビジネスやリサイクルショップは「1. 古物商営業」に該当し、警察署経由で公安委員会の許可が必要です(第3条第1項)。一方で、プラットフォーム運営(3)の場合は届出となります。
| 営業の種類 | 概要 | 必要な手続き | 法的根拠 |
|---|---|---|---|
| 1. 古物商営業 | 最も一般的。古物を売買・交換、または委託を受けて売買・交換する営業。(リサイクルショップ、古本屋、中古車販売など) | 公安委員会の許可 | 第2条第2項第1号、第3条 |
| 2. 古物市場営業 | 古物商同士が古物を売買・交換するための市場を経営する営業。(オートオークション会場の運営など) | 公安委員会の許可 | 第2条第2項第2号、第3条 |
| 3. 古物競りあっせん業 | インターネット上で古物の売買を「競り(オークション)」の方法であっせんする営業。(オークションサイトの運営者など) | 公安委員会への届出 | 第2条第2項第3号、第10条の2 |
許可と届出の違い
許可は事前審査が必要で、審査により不許可となる場合があります。届出は要件を満たせば受理されます。
そもそも「古物」の定義とは?新品も対象になる?
「中古品」だけが古物ではありません。法律では以下の3つのいずれかに該当するものを「古物」と定義しています(古物営業法第2条第1項)。
- 一度使用された物品
- 使用されない物品で使用のために取引されたもの(※特に注意)
- 上記の物品に幾分の手入れをしたもの(本来の性質を変えない程度の修理など)
「新品」でも許可が必要なケース
特に注意が必要なのは、上記2番目の「使用されない物品で使用のために取引されたもの」です。
たとえ箱を開けていない「新品・未開封」の商品であっても、小売店から購入した消費者がそれを転売目的で仕入れる場合や、一度市場に流通したものを買い取って販売する場合は「古物」として扱われます(いわゆる新古品など)。
メーカーや卸売業者から直接仕入れる「本当の新品」のみが古物から除外されます。
意外な「古物」と対象外のもの
- 古物に含まれるもの
商品券、乗車券、郵便切手などの金券類(古物営業法施行令第1条) - 古物に含まれないもの
航空機、鉄道車両、重さ20トン以上の船舶、大型機械類(工作機械など)、庭石など(古物営業法第2条第1項ただし書き、施行令第1条)
古物商許可が「不要」な例外ケース
原則として古物を扱うビジネスには許可が必要ですが、盗品流通のリスクが低い特定のケースは規制対象外となります(古物営業法第2条第2項各号)。
① 自分の不用品を売る場合
自分が使っていた物をフリーマーケットやオークションで売る場合は、「営業」ではないため許可は不要です。
② 無償で譲り受けた物を売る場合
タダで貰ったものや、処分料をもらって引き取った物を修理して販売する場合(買取りを行っていないため)。
③ 売った相手から買い戻す場合
自社で販売した商品を、その顧客から買い戻すことのみを行う場合(古物営業法第2条第2項第2号イ)。
古物商許可取得の条件:欠格事由と全国一本化
古物商許可を取得するには、申請者や管理者が「欠格事由(けっかくじゆう)」に該当しないことが大前提です(古物営業法第4条)。
主な欠格事由(許可が取れない人)
以下のいずれかに該当する場合、許可を受けることはできません。
- 破産者
・ 破産手続き開始の決定を受け、復権を得ていない者(第4条第1号) - 犯罪歴がある者
・禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わってから5年を経過しない者(第4条第2号)
・無許可営業、窃盗、背任、遺失物横領、盗品譲受けなどの特定の罪で罰金刑を受け、5年を経過していない者(第4条第3号) - 暴力団関係者
・暴力団員、または暴力団員でなくなってから5年を経過しない者(第4条第4号) - 住所不定者
・住居の定まらない者(第4条第7号) - 管理者の未選任
・営業所ごとに適切な「管理者」を選任していない場合(第4条第8号、第13条)
古物商許可の「全国一本化」について
以前は営業所がある都道府県ごとに許可が必要でしたが、法改正により令和2年4月から許可が全国で一本化されました。
主たる営業所(本店など)で許可を受けていれば、他県に新しい店舗を出す際は、事前の「変更届出」だけで済むようになり(第7条第1項)、事業展開がしやすくなっています。
まとめ:適正な運営のためにまずは「定義」の確認を
古物営業を始めるにあたっては、以下のフローチャートを確認しておきましょう。
- 1.ビジネスモデルの確認
- 「売買」か「市場運営」か「あっせん」か?
- 2.物品の確認
- 扱う商品は法律上の「古物」に当たるか?
- 3.要件の確認
- 申請者が管理者が「欠格事由」に該当しないか?
古物商許可は、盗品の流通防止を目的とした重要な制度です(古物営業法第1条)。無許可営業のリスク(3年以下の懲役または100万円以下の罰金、第31条第1号)を避けるためにも、公安委員会の許可取得(または届出)を確実に行いましょう。
また、許可取得後も「本人確認義務」(第15条)や「帳簿への記録義務」(第16条)など遵守すべきルールが多々あります。
手続きに不安がある場合や、古物商の許可が必要か判断が難しい場合は、行政書士への相談をおすすめします。
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