埋蔵文化財の発掘届出とは?【文化財保護法第93条届出】

発掘作業

土木工事や建築工事を計画する際には、埋蔵文化財の有無を確認し、必要に応じて適切な手続きや調査を行うことは事業計画を円滑に進めるために欠かせません。
本記事では、埋蔵文化財に関する基本的な知識と、対応が求められる具体的な手続きの流れについて解説します。

埋蔵文化財とは、土地に埋蔵されている文化財ことを指します。具体的には、古墳や集落跡などの遺跡、そこから出土する土器や石器などの遺物が含まれます。これらは私たちの先祖が残した貴重な歴史的資料であり、文化財保護法によって厳重に保護されています。

文化財保護法第93条の規定により埋蔵文化財包蔵地内で土木工事などの開発事業を行う場合、事前に届出を行う必要があります。小規模な工事であっても、該当地域での工事を計画している場合は必ず確認が必要です。

事前調査の実施

埋蔵文化財包蔵地に該当するかどうかの確認は、各市町村の文化財担当課で行うことができます。この段階で、必要な手続きの内容や期間についても詳しい説明を受けることができます。

岩手県の場合、「いわて遺跡地図」のWebサイトで大まかな情報を確認することができます。なお、掲載されている情報は最新のものではないため、必ず各市町村の文化財担当課に確認するようにしてください。

参考情報: いわて遺跡地図:https://maizobunkazai-web.pref.iwate.jp/

届出書の提出と手続きの流れ

確認の結果、事業計画地が埋蔵文化財埋蔵文化財包蔵地内であり、届出が必要とされた場合、工事着手の60日前までに市町村教育委員会に届出書を提出します。

提出後は、現地の状況に応じて次のような対応が指示されます。

  • 発掘調査の実施:現状保存が不可能な場合に必要となる記録保存のための調査です。調査期間や費用について、事前に担当部署と協議が必要です。
  • 工事立会の実施:届出内容から埋蔵文化財を損壊する可能性が低いと判断されるものの、念のため掘削状況を現地で確認する必要がある場合や、工事範囲が狭く通常の発掘調査が実施できない場合などに行われます。いずれの場合も、文化財担当者が現地に立ち会い、工事の進行状況を確認しながら慎重に作業を進めていきます。
  • 慎重工事の指示:比較的影響が少ないと判断された場合に適用されます。工事中に遺跡や遺物を発見した際は、直ちに工事を中断し、市町村文化財担当課への連絡が必要です。

埋蔵文化財の取り扱いは、事業計画に大きな影響を与える可能性があります。発掘調査が必要となった場合や、重要な遺跡が発見された場合は、工事計画の変更や、場合によっては中止が必要になることもあります。

そのため、以下の点に特に注意が必要です。

  • 事業計画の初期段階での確認
  • 十分な工期の設定
  • 発掘調査費用の予算計上
  • 代替地の検討

発掘調査が必要な場合や、試掘調査の結果、埋蔵文化財が発見された場合、工事計画の変更や中止が必要になることがあります。計画段階から文化財担当部署への相談や届出を行い、適切な手続きを確実に進めることが重要です。

文化財保護法第92条、第93条

(調査のための発掘に関する届出、指示及び命令)
第九十二条 土地に埋蔵されている文化財(以下「埋蔵文化財」という。)について、その調査のため土地を発掘しようとする者は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、発掘に着手しようとする日の三十日前までに文化庁長官に届け出なければならない。ただし、文部科学省令の定める場合は、この限りでない。
2 埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項の届出に係る発掘に関し必要な事項及び報告書の提出を指示し、又はその発掘の禁止、停止若しくは中止を命ずることができる。

(土木工事等のための発掘に関する届出及び指示)
第九十三条 土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的で、貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地(以下「周知の埋蔵文化財包蔵地」という。)を発掘しようとする場合には、前条第一項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日前」とあるのは、「六十日前」と読み替えるものとする。
2 埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項で準用する前条第一項の届出に係る発掘に関し、当該発掘前における埋蔵文化財の記録の作成のための発掘調査の実施その他の必要な事項を指示することができる。