都市計画法第43条の建築許可とは?│市街化調整区域での建築について分かりやすく解説

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都市計画法第43条に基づく建築許可制度市街化調整区域における建築を計画する際に把握しておくべき重要な制度です。
この許可制度は無秩序な市街化を防止し、地域の計画的な発展を実現するために設けられています。

本記事では都市計画法第43条に基づく建築許可制度について、許可基準や申請手続きの流れ、必要書類、許可不要となるケースなどをわかりやすく解説します。

都市計画法第43条の建築許可(※)とは市街化調整区域内で開発行為を伴わない建築物の新築、改築、用途変更や第一種特定工作物(アスファルトプラント、クラッシャープラントなど)を新設する際に必要となる許可です。

⇒開発行為を伴う場合は都市計画法第29条の「開発許可」を受ける必要があります。

※正式名称:建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設許可

市街化調整区域とは都市計画法第7条第3項に基づき指定される区域であり、市街化を抑制すべき区域として位置づけられています。
市街化調整区域では原則として新たな建築や開発行為が制限されます。

岩手県では「盛岡広域都市計画区域(盛岡市・滝沢市・矢巾町)」において、市街化区域と市街化調整区域に区分されています。

市街化区域との違い

項目市街化区域市街化調整区域
法的性質積極的な市街化を図る区域市街化を抑制すべき区域
開発・建築の規制原則自由原則制限
用途地域設定あり原則設定なし

開発行為とは(都市計画法第4条第12項)

開発行為とは主に建築物の建設や特定工作物の設置を目的として行う、土地の区画形質の変更を指します。

  • 土地の区画の変更:道路などの公共施設の変更を伴う敷地の境界の変更
  • 土地の状の変更:切土や盛土などの造成行為による土地の物理的形状の変更
  • 土地の性の変更:宅地以外の土地を宅地とする土地利用の変更

都市計画法29条(開発許可)と43条(建築許可)の違い

項目都市計画法第29条(開発許可)都市計画法第43条(建築許可)
対象区域主に都市計画区域及び準都市計画区域市街化調整区域
対象行為土地の区画形質の変更を伴う開発行為開発行為を伴わない建築行為
具体例宅地分譲地や商業施設の建設のための土地造成工事自己用住宅の新築、既存建物の用途変更
許可の基準環境保全、災害防止、公共施設の整備状況などを総合的に審査市街化を促進しないこと、地域の条例に基づく基準を満たすこと
手続きの流れ事前相談 → 許可申請 → 審査 → 許可 → 工事着手事前相談 → 許可申請 → 審査 → 許可 → 建築確認申請
許可不要なケース一定規模未満の開発行為農家住宅の建築、既存建築物の建て替えなど
  • 農林漁業用建物:農業従事者の住宅(農家住宅)や農業用倉庫など
  • 公共施設:駅舎や公民館などの公共用建物
  • 都市計画事業として行われる建築や用途変更など
  • 災害時の応急措置として行われる建築や用途変更など
  • 特定の開発行為が行われた土地での建築や用途変更など
  • 通常の管理行為や軽微な行為(既存建築物の建て替えなど)
項目許可が必要な場合許可が不要な場合
建築物の種類分家住宅、特定の公共施設など農家住宅、既存建築物の建て替え、10㎡以内の増築・改築など
根拠条文都市計画法第43条第1項都市計画法第43条第1項ただし書き、都市計画法第29条第1項第2号~第11号など

都市計画法第43条の許可を受けるには都市計画法施行令【政令】第36条に規定されている許可基準を満たす必要があります。

都市計画法43条第2項において、「許可の基準は第33条(⇒技術基準)及び第34条(⇒立地基準)に規定する開発許可の基準の例に準じて政令で定める」と規定されています。

この規定を受けて、都市計画法法施行令【政令】第36条で「開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の許可の基準」が定められています。

技術的基準(施行令第36条第1項第1号)

建築物や特定工作物を安全に使用するために満たすべき条件です。
排水対策や災害防止策が含まれます。

排水施設の基準(イ)

  • 敷地内の排水が適切に処理され、周辺地域に水害が生じないようにする必要があります。
  • 以下の点を考慮して、排水施設を適切に配置する必要があります。
  • 地域の降水量
  • 敷地の規模、形状、地盤の性質
  • 周辺の状況や放流先の状況
  • 建築物・工作物の用途

災害防止のための措置(ロ)

  • 地盤沈下や崖崩れ、水害などを防ぐための対策を講じる必要があります。
  • 具体的には以下のような安全対策が求められます。
  • 地盤改良
  • 擁壁の設置
  • 排水施設の整備

立地的基準(施行令第36条1項3号)

  • 市街化を抑制すべき区域としての市街化調整区域の特性から、建築可能な土地に関する基準が定められています。
  • 以下のいずれかに該当する場合に限り建築が許可されます。
  • (イ) 都市計画法第34条第1号〜第10号で認められるもの
  • (ロ) 第34条第11号で指定された土地の区域内で条例に適合するもの
    ⇒「盛岡市11号条例(通称)」など
  • (ハ) 市街化を促進しないと認められ、市街化区域内で建築が困難または不適当なもの(都道府県の条例で区域・目的・用途が限定される)
  • (ニ) 第34条第13号に規定される者が同条で認められた目的のために建築するもの(一定期間内に建築する場合)
  • (ホ) 市街化を促進せず、市街化区域内で建築が困難または不適当なものとして開発審査会の議を経たもの
    ⇒「分家住宅」など

※事業計画地が地区計画や集落地区計画内に位置する場合は、計画の規定に適合している必要があります。
⇒都市計画法施行令第36条1項2号

項目基準の内容具体的な要件
①技術的基準排水施設の基準降水量・地盤・周辺環境を考慮し、適切な排水施設を設置すること。
災害防止措置地盤改良・擁壁設置・排水施設整備など、安全対策を講じること。
②立地的基準  建築可能な建物・工作物の種類条例や都市計画法第34条の規定に該当し、市街化促進の恐れがないこと。

事前調査

市町村の都市計画担当課で建築予定地が市街化調整区域に該当するかを調査し、該当する場合は建築可能な条件や事前相談に必要となる書類を確認します。

この段階で、農地法や建築基準法など、関連する法律に基づく手続きの必要性についてもそれぞれの担当課に確認します。

STEP
1

事前相談

事前相談に必要な書類を準備のうえ、市町村の都市計画担当課へ建築物の用途や土地利用計画などの具体的な建築計画について相談を行い、許可の見込みを確認してください。

事前相談に必要な主な書類は次のとおりです。詳細は市町村の都市計画担当課へお問い合わせください。

  • 位置図
  • 地図または地図に準ずる図面の写し
  • 土地の登記(全部)事項証明書
  • 建物の登記(全部)事項証明書
  • コンピュータ化に伴う閉鎖登記簿謄本
  • 現況写真
  • 予定建築物の図面(配置図、平面図、立面図)
STEP
2

申請書類の準備

申請書類は案件によって異なりますが、主な書類は次のとおりです。

  • 許可申請書
  • 委任状(代理人による申請の場合)
  • 位置図(1/25,000以上の都市計画図を使用)
  • 案内図(1/2,500の国土基本図を使用)※岩手県庁売店で購入
  • 公図(法務局)
  • 土地登記事項証明書(法務局)
  • 敷地求積図
  • 理由書
  • 住民票
  • 戸籍謄本
  • 資産証明書(資産がない場合は、無資産証明)※市町村税務担当課で取得
  • 許可書、承諾書など
  • 配置図
  • 各階平面図
  • 立面図
  • 排水施設図
  • 現況写真
STEP
3

許可申請

事前相談で許可の見込みが立った後、必要書類を揃えて申請を行います。
⇒申請手数料(盛岡市、滝沢市、矢巾町:敷地面積1,000㎡未満 6,900円

建築許可の許可権者

盛岡市:盛岡市長
滝沢市、矢巾町:岩手県知事

STEP
4

審査・許可

申請内容の審査(開発審査会への付議案件の場合は、審査会での審査及び同意)を経て、要件を満たしていれば許可書が交付されます。
農地転用許可が必要となる場合は、建築許可と併せて許可されます。
⇒許可書取得後、建築確認申請を行います。

STEP
5
建築計画

都市計画法第43条の建築許可制度は地域の秩序ある発展を支える重要な仕組みです。
手続きには複数の法律が関係する場合が多く、時間と労力がかかるため、十分な時間的余裕を持って進めることをお勧めします。

当所では建築許可申請や農地転用許可申請などの土地に関する手続きの代行を承っております。
手続きについてご不明な点やお困りごとがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

都市計画法第43条

(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限)
第四十三条 何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して同項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物としてはならない。ただし、次に掲げる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設については、この限りでない。
一 都市計画事業の施行として行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設
二 非常災害のため必要な応急措置として行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設
三 仮設建築物の新築
四 第二十九条第一項第九号に掲げる開発行為その他の政令で定める開発行為が行われた土地の区域内において行う建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設
五 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
 前項の規定による許可の基準は、第三十三条及び第三十四条に規定する開発許可の基準の例に準じて、政令で定める
3 国又は都道府県等が行う第一項本文の建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設(同項各号に掲げるものを除く。)については、当該国の機関又は都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもつて、同項の許可があつたものとみなす。

都市計画法施行令第36条

(開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の許可の基準)
第三十六条 都道府県知事(指定都市等の区域内にあつては、当該指定都市等の長。以下この項において同じ。)は、次の各号のいずれにも該当すると認めるときでなければ、法第四十三条第一項の許可をしてはならない。
一 当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物の敷地が次に定める基準(用途の変更の場合にあつては、ロを除く。)に適合していること。⇒技術基準
イ 排水路その他の排水施設が、次に掲げる事項を勘案して、敷地内の下水を有効に排出するとともに、その排出によつて当該敷地及びその周辺の地域に出水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されていること。
(1) 当該地域における降水量
(2) 当該敷地の規模、形状及び地盤の性質
(3) 敷地の周辺の状況及び放流先の状況
(4) 当該建築物又は第一種特定工作物の用途
ロ 地盤の沈下、崖がけ崩れ、出水その他による災害を防止するため、当該土地について、地盤の改良、擁壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられていること。
二 地区計画又は集落地区計画の区域(地区整備計画又は集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内においては、当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物の用途が当該地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合していること。
三 当該許可の申請に係る建築物又は第一種特定工作物が次のいずれかに該当すること。⇒立地基準
イ 法第三十四条第一号から第十号までに規定する建築物又は第一種特定工作物
ロ 法第三十四条第十一号の条例で指定する土地の区域内において新築し、若しくは改築する建築物若しくは新設する第一種特定工作物で同号の条例で定める用途に該当しないもの又は当該区域内において用途を変更する建築物で変更後の用途が同号の条例で定める用途に該当しないもの
 ⇒例)盛岡市11号条例(審査会付議不要)
ハ 建築物又は第一種特定工作物の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設として、都道府県の条例で区域、目的又は用途を限り定められたもの。この場合において、当該条例で定める区域には、原則として、第二十九条の九各号に掲げる区域を含まないものとする。
ニ 法第三十四条第十三号に規定する者が同号に規定する土地において同号に規定する目的で建築し、又は建設する建築物又は第一種特定工作物(第三十条に規定する期間内に建築し、又は建設するものに限る。)
 ⇒既存権利(審査会付議不要)
ホ 当該建築物又は第一種特定工作物の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において建築し、又は建設することが困難又は著しく不適当と認められる建築物又は第一種特定工作物で、都道府県知事があらかじめ開発審査会の議を経たもの
 ⇒例)【分家住宅】や【岩手県が独自に制定している:届出なき既存権利、既造成土地、申請なき既存宅地】など
2 第二十六条、第二十八条及び第二十九条の規定は、前項第一号に規定する基準の適用について準用する。

都市計画法第34条

第三十四条 前条の規定にかかわらず、市街化調整区域に係る開発行為(主として第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為を除く。)については、当該申請に係る開発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為が次の各号のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない。
一 主として当該開発区域の周辺の地域において居住している者の利用に供する政令で定める公益上必要な建築物又はこれらの者の日常生活のため必要な物品の販売、加工若しくは修理その他の業務を営む店舗、事業場その他これらに類する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為
二 市街化調整区域内に存する鉱物資源、観光資源その他の資源の有効な利用上必要な建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
三 温度、湿度、空気等について特別の条件を必要とする政令で定める事業の用に供する建築物又は第一種特定工作物で、当該特別の条件を必要とするため市街化区域内において建築し、又は建設することが困難なものの建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
四 農業、林業若しくは漁業の用に供する建築物で第二十九条第一項第二号の政令で定める建築物以外のものの建築又は市街化調整区域内において生産される農産物、林産物若しくは水産物の処理、貯蔵若しくは加工に必要な建築物若しくは第一種特定工作物の建築若しくは建設の用に供する目的で行う開発行為
五 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(平成五年法律第七十二号)第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第二条第三項第三号の権利に係る土地において当該所有権移転等促進計画に定める利用目的(同項第二号に規定する農林業等活性化基盤施設である建築物の建築の用に供するためのものに限る。)に従つて行う開発行為
六 都道府県が国又は独立行政法人中小企業基盤整備機構と一体となつて助成する中小企業者の行う他の事業者との連携若しくは事業の共同化又は中小企業の集積の活性化に寄与する事業の用に供する建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
七 市街化調整区域内において現に工業の用に供されている工場施設における事業と密接な関連を有する事業の用に供する建築物又は第一種特定工作物で、これらの事業活動の効率化を図るため市街化調整区域内において建築し、又は建設することが必要なものの建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
八 政令で定める危険物の貯蔵又は処理に供する建築物又は第一種特定工作物で、市街化区域内において建築し、又は建設することが不適当なものとして政令で定めるものの建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
八の二 市街化調整区域のうち災害危険区域等その他の政令で定める開発行為を行うのに適当でない区域内に存する建築物又は第一種特定工作物に代わるべき建築物又は第一種特定工作物(いずれも当該区域外において従前の建築物又は第一種特定工作物の用途と同一の用途に供されることとなるものに限る。)の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
九 前各号に規定する建築物又は第一種特定工作物のほか、市街化区域内において建築し、又は建設することが困難又は不適当なものとして政令で定める建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
十 地区計画又は集落地区計画の区域(地区整備計画又は集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、当該地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合する建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為
十一 市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの
十二 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県の条例で区域、目的又は予定建築物等の用途を限り定められたもの
十三 区域区分に関する都市計画が決定され、又は当該都市計画を変更して市街化調整区域が拡張された際、自己の居住若しくは業務の用に供する建築物を建築し、又は自己の業務の用に供する第一種特定工作物を建設する目的で土地又は土地の利用に関する所有権以外の権利を有していた者で、当該都市計画の決定又は変更の日から起算して六月以内に国土交通省令で定める事項を都道府県知事に届け出たものが、当該目的に従つて、当該土地に関する権利の行使として行う開発行為(政令で定める期間内に行うものに限る。)
十四 前各号に掲げるもののほか、都道府県知事が開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為